千葉地方裁判所 昭和43年(借チ)3号 決定
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔決定理由〕一、本件土地137.19平方米が相手方の所有であり、相手方はそれを昭和二一年四月木全乕尾に期間の定めなく賃貸し、その後昭和三九年に申立人がその賃借人の地位を承継したこと、その地代が昭和四二年一二月までは一ケ月二、〇〇〇円であつたが昭和四三年一月から一ケ月四、〇〇〇円に値上げされたこと、申立人が本件土地の上にその主張の木造店舗兼居宅を所有していること、はいずれも当事者間に争いがない。また右事実からすると本件土地の借地期間は昭和五一年三月までの三〇年間となる。
二、本件においては増改築を制限する借地条件が定められているか否かについて争いがある。申立人の陳述からすると、昭和二一年の契約当時には恐らくそのような条件は定められなかつたであろう。しかし昭和四二年一二月に作成された土地賃貸借契約書には増改築について相手方の書面による承諾を要することに定められている。そして申立人および篠田照子の各陳述によれば、その当時申立人から相手方に改築の申出があり、相手方からは改築を承諾しない旨の内容証明郵便が申立人に送られていて、当事者間でなお改築の承諾料などの交渉中であつたことがうかがはれる。そうすると、右契約書の記載をいちがいに例文として拘束力がないとするわけにもいかない。
しかしこのように増改築を制限する借地条件の定めがあることが明らかでない場合においても、その増改築について現に協議が整はないときは、裁判所は申立を却下することなく、申立の当否について審判するのが相当であり、許可の裁判に伴つて附随の裁判をすることもできると解すべきである。
三、申立人はかねて本件土地で竹茂という飲食店を経営しているが、今回既存建物をとりこわして木造モルタル塗亜鉛メッキ鋼板葺二階建店舗兼居宅(柱に軽量鉄骨を使用する、床面積は一、二階とも三一坪五)を建て、営業を発展させようと計画している。
本件土地は本千葉駅、県庁市役所に近く、商業地域で準防火地区に属する。そうすると本件改築は本件土地の通常の利用上相当とすべきものと解される。相手方はそれを争うが、隣接地の日照通風が本件改築によつて従前よりも特に悪くなるとは認められないし、本件改築が新築であつて借地権の消滅時期が先に延びることも、当事者双方の現在の状況からすれば期間満了の際の更新の見込みが大きいので、改築を相当でないとする根拠にはならない。
四、つまり、申立人の本件改築はこれを許可すべきである(もつとも改築の規模は建築基準法の許容する範囲に止まるべきことは当然である。)その場合、地代は値上げになつて間もないし、その額からしても、特に増額する必要をみない。借地期間については、借地法第七条が適用される(なお相手方は異議をのべることができないと解する)から、許可の効力が生ずる時に当然更新され、それから二〇年間存続する。
財産上の給付について。本件土地の賃貸借については、従来権利金の授受がなかつたこと、今回の改築が全面的新築の計画であること、一般に地代が地価の値上りに応じて修正されにくいこと、等の事情から考えると、借地期間が更新される際に地価値上りの一部を地主に還元するのが当事者の衝平に合致する。本件において、申立人は相手方にその意味で、更地価格の一〇%に当る金額を支払うのが相当であり、鑑定委員会の意見(更地価格一平方米当り五万円、更新料はその一割とする)に従つてその額を六八万六、〇〇〇円と定める。なお鑑定委員会は今後の借地期間に相応する更新料のみならず既に経過した借地期間に相応する更新料も支払うよう求めるが、それは相当でない。また申立人は残存借地期間を控除して実際に延長される期間に相応する更新料で足りるとするが、借地法第七条により改築のとき更新されるのであるから、残存期間を控除すべきではない。相手方は新規に賃貸借する場合と同視しようとするが、申立人の借地権が現存し、その更新の見込も大きいことからして、賛同できない。
なお申立人が改築資金を準備できなかつた場合にそなえ、その希望を容れて、財産上の給付を許可の条件にかからしめることとする。(水上東作)